FTMの方
- 作用
- 筋肉量の増加、体毛(ヒゲなど今まで生えていない部分)の増加、声変わり(嗄声)、陰茎の肥大、月経の停止など
- 副作用
- 肝機能障害、回復し難い嗄声、ざ瘡(ニキビ)、多幸感、注射部位の疼痛・発赤・硬結など
注射剤:テスチノン・エナルモン・テストロンなど様々な名称がありますが、これらは各製薬会社が名付けた商品名ですので、有効成分は同一のものです。
125mg、250mgの製剤が存在します。
②250mgを3週ペースで注射
効果や血液検査を通して投与量や投与間隔を決定するのがベストですが、はじめて開始する場合には上記の2パターンのどちらかでスタートするのが良いです。
3〜6ヶ月程度行い、体調の変化・効果の実感具合・血液検査を通してさらに細かい微調整をする場合があります。
テストステロン製剤は、医療品医療機器等法において、「男子性腺機能不全」の効能・効果で承認されていますが、当院で行うトランスジェンダーの方への使用については国内で承認されていません。適応外使用となりますことを予めご理解ください。
MTFの方
MTFの方がホルモン治療を行いたい場合、女性ホルモン剤を使用します。
- 作用
- 髪質の変化、皮膚の質感の変化、性欲の低下
- 副作用
- 血栓症・乳がん・肝機能障害・注射部位の疼痛・発赤・硬結など
日本国内で承認されている薬剤
注射剤:プロギノン
貼付剤:エストラーナ
内服薬:プレマリン
注射剤は確実な投与方法です。内服薬のような肝臓の通過障害を起こさないため肝臓への負担が少なく、貼付剤で頻発するようなテープかぶれも起こしません。
優先順位は 注射剤>貼付剤>内服薬 となります。
プロギノンデポー10mgを1〜2週に1回(2週間隔だと少ない場合が多いです)
効果や血液検査を通して投与量や投与間隔を決定するのがベストですが、はじめて開始する場合には上記のパターンでスタートするのが良いです。
3〜6ヶ月程度行い、体調の変化・効果の実感具合・血液検査を通してさらに細かい微調整をする場合があります。
ペースが男性ホルモン剤と異なりますがこれは代謝速度が異なるためですので、女性ホルモン剤は2週以上は空けない方が良いです。
ご事情により注射剤の投与が困難な場合は、貼付剤や内服剤で継続できるよう相談しながら決めましょう。エストロゲン製剤は、医療品医療機器等法において、「卵巣欠落症状」の効能・効果で承認されていますが、当院で行うトランスジェンダーの方への使用については国内で承認されていません。適応外使用となりますことを予めご理解ください。
【重要】SRS術後の方
手術によって精巣もしくは卵巣を摘出した場合、その後のホルモン治療を継続することはとても大切です。
忘れてしまうと、脳血管疾患・心疾患など重篤な疾患をはじめ、ホルモンに関連した多くの疾患にかかりやすくなってしまいます。
当院にもときどき術後数年から長い方ですと10年ほどもホルモン剤を打っていない状態の方が受診されます。受診される方は再開できるのでまだ良いのですが、実際には世の中にSRS後に全くホルモン補充療法を行っていないという方もいるはずです。
今後も当院では注意喚起を行っていきますが、もし周りでそういった状態の方がいらっしゃいましたら是非教えてあげてください。
現在は以前にくらべて比較的クリニックや病院での認知が進んでいるため、治療再開も難しくないと思います。よろしくお願いいたします。
ホルモンについて
詳しく学ぶ
ホルモンとは身体の特定の組織または器官で生産され,直接体液中に分泌されて運ばれ,特定の組織や器官の活動をきわめて微量で調節する生理的物質の総称です。
総称のためホルモンとして分類される物質は少なくとも100種類以上知られています。 また未知のホルモンもあるため今後も数は増えていくと考えられています。
ホルモンを産生する臓器は、主に脳下垂体、甲状腺・副甲状腺、副腎、膵臓、胃腸・心臓血管、脂肪・神経系、精巣・卵巣などが知られており、身体の様々な箇所から産生され、全身に送り届けられ身体の恒常性の維持を保っています。
このうち身体を、持って生まれた別の性に変えたいと考える場合には次のホルモンが重要となります。
1. テストステロン(通称:男性ホルモン)
2. エストラジオール(卵胞ホルモン 通称:女性ホルモン)
1と2をまとめて性腺ホルモンと呼びます。性腺とは精巣・卵巣など性別に関するホルモンを分泌する内分泌腺のことです。
性別を問わず、人の健康を維持していくためにはこれらの性腺ホルモンはとても重要です。
加齢ととも減少することからも、性腺ホルモンは端的に言うと“若さ”を維持させる作用を持っていると考えて間違いはありません。
またこれらのホルモンは、持って生まれた性と異なる性別に変えたい場合、薬剤として投与を行うと、テストステロン(男性ホルモン)を投与した場合、エストラジオール(女性ホルモン)の産生は抑制され、エストラジオール(女性ホルモン)を投与した場合、テストステロン(男性ホルモン)の産生は抑制されるように働きます。
そのため身体としては、どちらか一方のホルモンが十分に存在すれば片方のホルモンは健康維持のために多くは必要ないと判断される機構が働きます。
どちらのホルモンであっても、健康は維持されるのですが、テストステロン・エストラジオールの作用は全く異なります。そのためいわゆる男女における身体外見上の”性差“というものが現れるわけです。
(参考文献)日本内分泌学会ホームページ