3つの術式

子宮/卵巣摘出手術には大きくわけて3つの手術方法があります。

腟式手術

腹部には全く切開を加えずに、膣より手術器械を入れて子宮とその付属器を摘出する方法。
腹部に切開を加えないため、この手術方法が最も身体負担が少ない方法です。

ただし、FTMの多くの方は分娩経験や膣を通した性交渉が少ないことが多いため、手術難易度は高くなります。
そのため、事前の検査によって適応があるかどうか判断します。

手術時間
30分~1時間半程度
麻酔方法
脊髄くも膜下麻酔+静脈麻酔(手術中に意識はありません)
痛みの程度
目の覚めたあと数時間はほぼ無痛です。
その後に重いような感じ、手術翌日には強い痛みのある方はほぼいません。内服の鎮痛薬も必要ないことがほとんどです。
腹腔鏡手術

腹部に4箇所ほど小さい切開(全て5mmポート)を加えて、その傷口よりカメラ・手術器具を入れて子宮とその付属器を摘出する方法。

腹部には小さいものの、傷が残ります。傷は筋肉や周辺組織も通過していますので術後の痛みも腟式手術に加えると出現しやすくなります。
ただしこの後説明する開腹手術よりは傷口が小さいため一般的には『低侵襲手術』と呼ばれています。

手術時間
1時間〜1時間半程度
麻酔方法
全身麻酔+ブロック注射、適宜硬膜外麻酔追加(手術中に意識はありません)
痛みの程度
目の覚めたあと数時間はほぼ無痛です。
その後に重いような感じ、手術翌日は腹部の傷に少し痛みがあります。1週間程度続きますが鎮痛薬でコントロールできる程度がほとんどです。
開腹手術

腹部に1箇所(通常は下腹部の横切開)10cm程度の切開を加え、子宮とその付属器を摘出する方法。

先にあげた、『膣式手術』や『腹腔鏡手術』が困難と考えられる事例において選択されます。
例えば巨大筋腫が存在するとき等です。
侵襲の度合いは高くなりますので、術式を選択する際は第一選択としない方が良いです。

手術時間
1時間〜1時間20分程度
麻酔方法
全身麻酔+ブロック注射、適宜硬膜外麻酔追加(手術中に意識はありません)
痛みの程度
目の覚めたあと数時間はほぼ無痛です。
その後に痛みが出ますので、適宜注射薬で痛みのコントロールを行います。
手術翌日にはリハビリのため離床を開始します。痛みは強く続く場合がありますので点滴薬や内服薬でコントロールします。
痛みは退院後も続きます(2〜3週程度)ので内服薬でコントロールします。咳やくしゃみ笑ったときなど腹筋に力が入ったときなど特に痛みが出現しやすいです。

以上、3つの術式:腟式手術・腹腔鏡手術・開腹手術について説明しましたが、目的は全て同じで「子宮およびその付属器」を摘出することです。目的に達するためのアプローチ方法が異なると考えて下さい。

術式の選択方法

基本的には当院では手術を受ける方へ最も侵襲(ダメージ)の少ない『膣式手術』を第一選択とします。

しかしながら、上述したようにこの手術の手術難度は高く、希望者全員に出来ますと約束できるものではありません。

手術を希望される方はまず診察で状態を確認した上で、腟式手術予定で問題ない可能性が高いかどうかを判断します。

診察では下記の要素を検討して術式を決定していきます。

身長・体重・年齢・膣の狭さの程度・膣の長さ
合併症の有無・開腹手術歴の有無・子宮異常の有無・付属器異常の有無
筋腫があるのであればその場所・大きさ
卵巣異常があるのであれば部位・性状・大きさ
子宮頚部/子宮体部の長さ・大きさの比
子宮頚部円蓋のサイズ・大きさ
周辺靭帯の柔軟性

これらを総合的に判断します。

手術におけるリスク・合併症に関して
子宮卵巣摘出術においては、「出血・感染症・術後疼痛・創部離開・他臓器損傷・使用薬剤によるアレルギー反応・術後腸閉塞・下肢深部静脈血栓症・肺塞栓・その他術中偶発症の発症」などがあります。
FTXの方:ホルモン補充療法を希望しない。戸籍上の性別も変える必要がない場合。
性自認が中性あるいは無性であり、毎月の月経が精神的に辛いという状況の方に対しては『子宮摘出』のみ行うことが可能です。
子宮を摘出することで月経は完全になくなります。卵巣を温存することでホルモンは保たれますので、術後にホルモン治療を行う必要はありません。
実績:手術数 1,052件