MTF・MTXの手術
※下記は、当院で行っているMTF・MTXの方のための手術説明になります
対象者
- MTF・MTX(出生時男性割り当て)の方で、体内のテストステロン産生を根本から抑え、薬剤管理の簡素化を行いたい方
- 抗アンドロゲン(スピロノラクトン等)の内服負担・副作用を減らしたい方
- 精巣という男性特有の器官があること自体に強い違和感を覚える方
- 将来のがん・腫瘍リスク(精巣腫瘍等)を低減したい方
- 将来的に外陰形成・膣形成(Vaginoplasty)を検討しており、事前にテストステロンを確実に抑えておきたい方
※膣形成を予定する方は陰嚢皮膚の温存が重要になることがあり、切開位置や瘢痕を最小化する手術を行います。
手術の意義・メリット
1. ホルモン治療の簡素化
- 精巣を摘出することで内因性テストステロンが大幅に低下し、抗アンドロゲン薬が不要になります。
- エストロゲンの減少期におけるテストステロン上昇を防ぎます。
- 体内から男性器官の一部がなくなること自体が大きな安心につながる方が多く、自分らしさの回復を助けます。
- 皮脂・多汗・頭髪への影響、体毛の減少など、テストステロン低下に伴う二次的な改善がみられることがあります(個人差あり)。
- 精巣腫瘍の発生源がなくなるため、当該リスクは実質的に消失します。
- 前立腺は残存しますが、テストステロン低下により前立腺由来の症状・リスクも相対的に低下する可能性があります。
- 精子産生が停止するため、性交による妊娠の可能性はゼロになります。避妊の不安が解消され、生活面の心理的負担が軽減します。
手術の限界・留意点
- 不可逆手術です。妊孕性は永久に失われます。術前の精子凍結は強く推奨します。
- 性機能(オーガズム、勃起能力)は個人差があり、変化する場合があります。性欲は一般に低下傾向ですが、エストロゲン最適化で安定する方もいます。
- 外見(顔・骨格・声帯など)は変わりません。外見の女性化にはエストロゲン治療、時間経過、必要に応じ美容医療が関与します。
- 術後もエストロゲン補充は原則継続が必要です(骨・心血管・認知機能の保護のため)。
- 合併症:血腫・感染・創離開・慢性疼痛・瘢痕・左右差・知覚変化など(後述)。
- 自費診療でのご案内となります。
両側精巣摘出術の概要
- 多くの方で陰嚢正中の小切開から両側の精巣・精巣上体を露出し、精索(動静脈・精管)を高位で結紮・切離して摘出します。
- 陰嚢皮膚は温存します(将来の膣形成で皮膚移植源となり得るため)。
- 血管の確実な止血・デッドスペースの最小化を行い、皮下・皮膚を審美的に層状縫合します。
- 必要に応じてドレーンを留置しますが、多くは不要です。
- 手術時間
- 約20-30分程度(個人差あり)
- 麻酔方法
- 最も安全な全身麻酔で手術を行います
※麻酔に関する詳細はこちら
- 入院
- 安心の1泊2日入院を基本とします
手術の選択は個人の価値観に依存
両側精巣摘出術は、ホルモン治療をより安全・シンプルにし、性別違和を軽減しうる重要な選択肢です。一方で、不可逆性・妊孕性の喪失という大きな要素を伴います。
- ホルモン治療のみで満足できるか
- 将来の外科計画(膣形成)の有無
- QOL・安全性・費用のバランス
手術費用
- 両側精巣摘出術
- 49万8000円
- 入院日数
入院費用は上記料金に含まれています - 1泊2日
- その他の費用として術前検査時に約2万円程度の検査費がかかります。
- 記載料金はすべて税込表示です。
